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執筆者の写真Tsutomu Akagi

キャンプシップがスキーキャンプに力を入れるワケ

こんにちは。キャンプシップアカデミーの代表、赤木努(トム)です。


この冬休み、私たちは総勢130名の子どもたちを連れて、長野県の志賀高原でスキーキャンプを開催しました。


昨年から参加者は3倍以上に増加しましたが、規模の拡大もさることながら、スキーキャンプを開催することの意義を再確認できたことが、なによりの収穫でした。


記念すべき公式ブログの第1回は、私たちが“スキーキャンプに力を入れるワケ”について、まとめておきたいと思います。


「そもそもスキーキャンプって何?」という方のために、定義を定めておきましょう。


<スキーキャンプとは?>

複数の子どもが親元を離れ、引率者と共に共同生活をしながら雪山でスキーや雪遊びを行う宿泊型のプログラム


よりイメージを持ってもらうために、2024年12月26日〜29日の3泊4日で開催したキャンプシップアカデミーのスキーキャンプ@志賀高原横手山スキー場のハイライトリールを載せておきます。




過去5回のスキーキャンプを通じて、キャンプシップアカデミーが掲げる『子どもの自立成長』・『協調性の発達』・『自己肯定感の醸成』といった理念を実現するために、スキーはとても相性が良いことを確認しました。


その理由は、主にスキーというスポーツの特性と、親元を離れて行う共同生活の組みあわてによって説明できると考えています。


大人も子ども対等に楽しめるスポーツ

スキーは老若男女が同様のレベルで楽しめる数少ないスポーツです。大人と子供が同じゲレンデを同じように滑走し楽しむことができるのはスキーの魅力の一つです。


これは、年齢や性別を超えて全員が対等であり、お互いを尊重するというキャンプシップアカデミーの理念にピッタリ合います。


例えば、共同生活を共にする引率リーダーの中には、スキー経験がない人もいます(大半は経験者です)。スキープログラムでは、必ずスキーをプロのコーチに教わる時間があり、スキー未経験のリーダーも子どもたちと一緒にコーチからスキーを学びます。


これにより、リーダーは子どもをサポートする人という単純な関係だけでなく、スキーを通じて参加者全員が同じ目標に向かえる環境を自然と作ることができるのです。


学生リーダーが率先して転び、斜面を怖がる姿を子どもたちが見て「怖いのは自分だけじゃないんだ、転んでも恥ずかしくないんだ」と思えること、これが子どもたちの心理的安全性に繋がっていることを学びました。


子どもと一緒にスキーキャンプを頑張るリーダー
リーダーも子どもたちと一緒に懸命にスキーをやります

スキーキャンプは自分のことは自分でやる習慣が身につく

親元を離れた共同生活では、基本的に自分の身の回りのことは自分でやらなくてはいけません。これは、スキーキャンプでなくても同じです。


しかし、スキーキャンプは普通のキャンプとは一味違います。


スキーをするために必要な小物(帽子、ゴーグル、ネックウォーマー、手袋、リフト券ホルダーなど)を全て自分で管理しなくてはいけません。


実際、未就学児や小学校低学年は気づかないうちに手袋を落としてしまったり、部屋にリフト券ホルダーを忘れてしまうことはよくあります。


そういうとき、私たちは「どうしたら持ち物をちゃんと管理できるだろうね?」と問いかけるようにしています。


席を立ったら周りに小物が落ちていないか見る、部屋を出る前に必要なものが揃っているか確認するなど、ちょっとした工夫で忘れ物は防ぐことができます。


子どもたちはそういった習慣をスキーキャンプの間に身をもって学び、自立への一歩を踏み出します。


スキーの板も基本的には自分で持ちます。なんでも最初から引率リーダーが手を差し伸べることはしません。こうした不便さこそが考える力を掻き立て、工夫を生むと考えています。


ある小学校低学年の保護者の方からいただいたコメントを引用します。

宿からゲレンデまで、板を運ぶのが辛かったようです。今日学校の始業式で荷物が多かったのですが、「オレは力が強くなったから大丈夫。あんなに重いの運んだから」と誇らしげに言っていました。親がいたら持ってあげていたと思います。でもその不自由さがこどもを鍛えることにもなっているのだと気づきました。
自分のことは自分でやる子どもたち
自分のスキーは自分で運ぶ子どもたち

周りを気にする・気を配る力

スキーキャンプでは、一人で滑走することはありません。必ず、コーチや同じレベルの子たちとチームを組んで滑ります。


キャンプシップアカデミーでは、班滑走の前にいくつか約束事をします。


  • 転んでしまったり、困っているチームメイトは積極的に助けよう

  • リフトに乗る前、降りたあとはチームメイトが全員いるか確認しよう

  • どのように滑るかは、チームで相談して決めよう


プログラムの初日や2日目の午前中ごろまでは、大抵の場合みんな自分の滑りに夢中であまり周りを見る余裕がありません。仲間が転んでも気づかない子がほとんどです。


しかし、2日目の午後くらいから変化が現れます。


少しずつ周りを気にかける声が出てきて、転んだ子を待ってあげたり、お互い励まし合うような声が出始めるのです。


子どもたちは、チームでスキーをするためには協調性が必要であることを自ら学び体現します。そして、協調性を発揮するために必要な、行動観察が自然とできるようになるのです。


"前もって"考える力

スキーは常に細かい状況判断が求められるスポーツです。同じゲレンデでも、天候や時間帯によって状況は異なります。混み具合などによっては突然横から別のスキーヤーが飛び出してくることもあります。


こうした状況においては、前もって考えることが非常に重要になります。5秒先に何が起きるのか、次はどっちに曲がるべきか、などを考える能力です。


これは、専門用語で"実行機能"と呼ばれるものです。私は、幼少期に著しく発達するこの能力を鍛える実践の場として、スキーは有効な手段だと考えています。


子どもの実行機能については、京都大学の森口教授の文献が非常に参考になるので、引用します。


子どものときにこの能力が高いと、学力や社会性が高くなり、さらに、大人になったときに経済的に成功し、健康状態も良い可能性が高いことが示されています。

森口佑介. 自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学 (講談社現代新書) (p.6)


"できた"を体験し成長を実感する

スキーは自転車などと同じで一度習得すると身体が自然と動く類のスポーツです。また、未経験でも比較的容易に上達できる反面、スキルアップの天井はとても高い(上には上がいる)点も特徴的です。


キャンプシップアカデミーでは、プログラム中にスキー検定を受験することを推奨しています。今の自分のスキーレベルを客観的に測ることが目的です。


自分が目標としている級を取れることは、誰だって嬉しいことです。それが自信につながり、自己肯定感を高めます。


現代の競争社会においては、自己肯定感が低い子どもが非常に多いように感じます。誰かと比較され、劣等感を感じる場面が多いからでしょうか。


スキー検定は、毎回合格するとは限りません。一定の練習が必要になるのは当然です。ただ、基本的にはスキーはやればやるだけ確実に上達します。


スキーは上達のサイクルが短いからこそ、達成感を感じやすく子どもの成長体験、原体験に繋がりやすいのだと考えています。


まとめ

ここまで述べてきた5つの理由をまとめると、以下の通りとなります。


  1. 年齢・性別に関係なく人はみな"対等"であることを学ぶ

  2. 自分のことは自分でする習慣から、"自立"が芽生える

  3. スキーの班滑走を通じて周りを気にする"協調性"が養われる

  4. 前もって考える力は近年注目されている"実行機能"と深い繋がりがある

  5. 短いサイクルで上達を感じることで"自己肯定感"を高める


私たちのプログラムはまだまだ発展途上です。これからも色々なやり方を試しながら、スキーをはじめとする自然体験を通じて子どもの成長体験、原体験をデザインする取り組みを続けていきます。

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